2｜大杉栄『獄中記』

東京外語大を出て8か月で入獄するや、看守の目をかすめて、エスペラント語にのめりこむ。英・仏・エス語から独・伊・露・西語へ進み、「一犯一語」とうそぶく。生物学と人類学の大体に通じて、一個の大杉社会学を志す。21歳の初陣から大逆事件の26歳まで、「頭の最初からの改造」を企てる人間製作の手記。

- 書　　名：獄中記

- 著　　者：大杉栄

- 解　　説：大杉豊

- 装　　丁：豊田卓

- 仕　　様：ペーパーバック判（172 × 112 × 19ミリ）224頁

- 番　　号：978-4-9905587-2-7

- 初　　版：2012年4月10日

- 定　　価：952円＋税

一　市ヶ谷の巻

二　巣鴨の巻

三　千葉の巻

四　続獄中記

五　獄中消息

獄中読書リスト／大杉栄略年譜／解説（大杉豊）

大杉栄〈おおすぎ・さかえ〉1885年、丸亀市に生まれる。「旧い日本を根本的に変革して、新しい日本を建設する」ことを目指した。【評論】『生の闘争』、『社会的個人主義』、『労働運動の哲学』、『クロポトキン研究』、『正義を求める心』、『二人の革命家』（伊藤野枝共著）、『無政府主義者の見たロシア革命』、『自由の先駆』ほか。【随筆・記録・創作】『獄中記』、『乞食の名誉』、『悪戯』、『漫文漫画』、『日本脱出記』、『自叙伝』ほか。【翻訳】ダーウィン『種の起原』、ル・ボン『物質不滅論』、ルソー『懺悔録』（生田長江共訳）、ルトウルノ『男女関係の進化』、ロマン・ロラン『民衆芸術論』、クロポトキン『相互扶助論』、同『革命家の思出』、ハード・ムーア『人間の正体』、ファーブル『昆虫記一』、同『自然科学の話』（安成四郎共訳）、同『科学の不思議』（伊藤野枝共訳）。

大杉豊〈おおすぎ・ゆたか〉1939年、横浜市に生まれる。

大杉栄が殺された当日に訪ねた弟が父であり、そこで生まれた。東京都立大学社会学科卒業。東京放送（TBS）入社、調査・営業・編成部門を経て定年退職。東放学園専門学校・常磐大学国際学部講師。編著書に『日録・大杉栄伝』（社会評論社）。

2012年

• 2月21日　『大杉栄　日本で最も自由だった男』（河出書房新社）発売
• 3月下旬　かわぐちかいじ・竹中労『黒旗水滸伝』（皓星社）復刊
• 4月17日　中森明夫 × 坂口恭平 in DOMMUNE 放送
• 4月30日　大杉豊さんが語る「大杉栄の精神と行動」全40枚スライドトーク＠千駄木・旧安田楠雄邸
• 5月13日　出版記念レセプション＠代官山M

2014年

• 10月17日　『美術手帖』書評

◉『美術手帖』2014年11月

「獄中で知り合った殺人犯や泥棒、詐欺師の話や獄中での過ごし方など、読み物としても面白い」

◉村田泰行（タワーレコード渋谷店7Fタワーブックス）

「あまりに格好のよい、シビれる名言多数。時代・運命に正面から立ち向かう潔い生き方は物語以上に面白い史実を語る。」

◉井上春樹（エッセイスト）

「あの大杉栄が、蘇って語りかけてくる。謹聴！」

――僕が分別盛りの三十四の今日まだ、危険人物なぞという物騒な名を歌われているのは、二十二の春から二十四の夏までの、血気にはやった若気のあやまちからのことだ。

――元来僕は一犯一語という原則を立てていた。それは一犯ごとに一外国語をやるという意味だ。

――あえてエンゲルスを気取るわけでもないが、年三十にいたるまでには必ず十カ国の言葉で吃ってみたい希望だ。それまでにはまだ一度や二度の勉強の機会（！）はあるだろう。

――僕は自分が監獄で出来あがった人間だということを明らかに自覚している。自負している。／入獄前の僕は、おそらくはまだどうにでも造りなおせる、あるいはまだろくには出来ていなかった、ふやふやの人間だったのだ。

――僕の今日の教養、知識、思想性格は、すべてみな、その後の入獄中に養いあげられ、鍛えあげられたといってもよい。

――僕は、最後に千葉監獄を出たとき、初めて自分がやや真人間らしくなったことを感じた。世間のどこに出ても、唯一者としての僕を、遠慮なく発揮することができるようになったことを感じた。

――牢獄生活は広い世間的生活の縮図だ。しかもその要所要所を強調した縮図だ。そしてこの強調に対するのに、等しくまた強調された心理状態をもって向かうのだ。これほどいい人間製作法が他にあろうか。

――僕は、かつて貪るようにして掻き集めた主義の知識をほとんどまったく投げ棄てて、自分の頭の最初からの改造を企てた。

――そうだ！　僕はもっと馬鹿になる修業を積まなければならない。

――僕は元来ごく弱い人間だ。もし強そうに見えることがあれば、それは僕の見え坊から出る強がりからだ。

――僕は出たが、どうせ当分は政治運動や労働運動は許されもすまいから、せめては文学にかこつけて、平民文学とか社会文学とかの名のつく文芸運動をやってみようかと思った。

――僕もすっかり角を折ってしまった。こんどこそは大いにおとなしくなろう。（堀保子宛の手紙）

――もとより僕の思想は棄てることはできぬ。僕は依然としてやはり社会主義者だ。むしろ獄中の生活は僕の思想をますます激しくする傾きがある。

- 大杉栄『獄中記』1919年

- 佐藤優『獄中記』2006年

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