マヤコフスキー叢書1
12|『ズボンをはいた雲』
小笠原豊樹の新訳でマヤコフスキーが甦る
ぼくの精神には一筋の白髪もない!
戦争と革命に揺れる世紀転換期のロシアに空前絶後の青年詩人が現れる。名は、V・マヤコフスキー。「ナイフをふりかざして神をアラスカまで追い詰めてやる!」と言い放ち、恋に身体を燃やしにゆく道すがら、皇帝ナポレオンを鎖につないでお供させる。1915年9月に友人オシップ・ブリークの私家版として1050部が世に出た青年マヤコフスキー22歳の啖呵が、世紀を越えて、みずみずしい新訳で甦る。入沢康夫序文。日本翻訳家協会特別賞。
- 書 名:ズボンをはいた雲
- 著 者:マヤコフスキー
- 翻 訳:小笠原豊樹
- 序 文:入沢康夫
- 仕 様:ペーパーバック判(172 × 112 × 8ミリ)96頁
- 番 号:978-4-907511-01-2
- 初 版:2014年5月10日
- 定 価:952円+税
も く じ
一 マヤコフスキー『ズボンをはいた雲』讃(入沢康夫)
二 ズボンをはいた雲 四畳み聖像
三 訳者のメモ(小笠原豊樹)
きみはマヤコーフスキイを読んだことがあるかい?
そのマヤコーフスキイが廿二歳のとき、《ズボンをはいた雲》という詩を書いたのさ、そして廿二歳ということの意味をかたっているんだ、それを知っているかい?
大江健三郎『日常生活の冒険』より
小笠原訳で目の前に現れた『ズボンをはいた雲』は、私のささやかな先入見を微塵に打ち砕き、底知れぬ魅惑の力で、次へ次へと行を追わせた
入沢康夫(詩人)
全く、こういうものは空前絶後というか、一九一五年当時の「二十二歳の美男子」マヤコフスキーにのみ発生した一種の奇跡みたいな現象で、それ以前には決してなかったし、それ以後の二十世紀が二十一世紀に変っても、当分はあり得ないのではあるまいか
小笠原豊樹(詩人・翻訳家)
革命の詩人の挑発的な躍動感を伝えてすばらしい
野村喜和夫(読売新聞、2014年11月18日)
ランボーが既成の言葉の秩序を組み替えて、破壊し、新たな幻惑を生んだように、マヤコフスキーもまた、時代の停滞した空間をかき乱し、予見的な詩人として登場する
世界日報(2014年10月12日)
四十七年前にこんなかっこいい啖呵が切れたらどんなによかっただろう、と老いていささかの白髪と優しさのぼくは思う
池澤夏樹(岩波書店「図書」2014年9月号)
若気のいたりと自信と性欲と傲慢さと虚勢と、恋と自負と全能感と希望がとにかく全開ですばらしい
山形浩生(新・山形月報、2014年6月24日)
日本の詩は近代以降、このようなユーモアと諧謔の精神を失ったまま袋小路に入っているから、もう一度、彼の仕事をふり返る必要がある
佐々木幹郎(熊本日日新聞、2014年6月22日)
躍動感あふれる言葉の裏に、不安や焦燥感が見え隠れする
平田俊子(共同通信)
あふれる情熱が言葉の奔流となり、
若者らしいナルシシズムとリリシズム、多彩なイメージを喚起させる力にあふれ、今読んでも古びた感じがしない。
芦原真千子(新文化、2014年5月22日)
若々しい。みずみずしい。高慢で、独りよがりだ。でも、その詩句は、疾走感に満ちている。
陣野俊史(日本経済新聞、2014年5月21日)
ナルシシズムを高らかに誇る「ぼくの精神には一筋の白髪もない」との断言が鮮烈だ。
2014年5月15日付「日本経済新聞」
著 者 略 歴
ヴラジーミル・マヤコフスキー Влади́мир Влади́мирович Маяко́вский
ロシア未来派の詩人。1893年、グルジアのバグダジ村に生まれる。1906年、父親が急死し、母親・姉たちとモスクワへ引っ越す。非合法のロシア社会民主労働党に入党し逮捕3回、のべ11か月間の獄中で詩作を始める。10年釈放、モスクワの美術学校に入学。12年、上級生ダヴィド・ブルリュックらと未来派アンソロジー『社会の趣味を殴る』のマニフェストに参加。13年、戯曲『悲劇ヴラジーミル・マヤコフスキー』を自身の演出・主演で上演。14年、第一次世界大戦が勃発し、義勇兵に志願するも結局、ペトログラード陸軍自動車学校に徴用。戦中に長詩『ズボンをはいた雲』『背骨のフルート』『戦争と世界』『人間』を完成させる。17年の十月革命を熱狂的に支持し、内戦の戦況を伝えるプラカードを多数制作する。24年、レーニン死去をうけ、叙事詩『ヴラジーミル・イリイチ・レーニン』を捧ぐ。25年、世界一周の旅に出るも、パリのホテルで旅費を失い、北米を旅し帰国。スターリン政権に失望を深め、『南京虫』『風呂』で全体主義体制を諷刺する。30年4月14日、モスクワ市内の仕事部屋で謎の死を遂げる。翌日プラウダ紙が「これでいわゆる《一巻の終り》/愛のボートは粉々だ、くらしと正面衝突して」との「遺書」を掲載した。
訳 者 略 歴
小笠原 豊樹 〈おがさわら・とよき〉 詩人・翻訳家。1932年、北海道虻田郡東倶知安村ワッカタサップ番外地(現・京極町)に生まれる。東京外国語大学ロシア語学科在学中にマヤコフスキー作品と出会い、52年に『マヤコフスキー詩集』を上梓。56年、岩田宏の筆名で第一詩集『独裁』を発表。66年『岩田宏詩集』で歴程賞。71年に『マヤコフスキーの愛』、75年に短篇集『最前線』を発表。露・英・仏の3か国語を操り、『ジャック・プレヴェール詩集』、ナボコフ『四重奏・目』、エレンブルグ『トラストDE』、チェーホフ『かわいい女・犬を連れた奥さん』、ザミャーチン『われら』、カウリー『八十路から眺めれば』、スコリャーチン『きみの出番だ、同志モーゼル』など翻訳多数。2013年出版の『マヤコフスキー事件』で読売文学賞。14年12月、マヤコフスキーの長詩・戯曲の新訳を進めるなか永眠。享年82。
マヤコフスキー叢書
- ズボンをはいた雲(入沢康夫)
- 悲劇ヴラジーミル・マヤコフスキー(平田俊子)
- 背骨のフルート(高橋睦郎)
- 戦争と世界(町田康)
- 人 間(佐々木幹郎)
- ミステリヤ・ブッフ(谷川俊太郎)
- 一五〇〇〇〇〇〇〇
- ぼくは愛する
- 第五インターナショナル
- これについて
- ヴラジーミル・イリイチ・レーニン
- とてもいい!(L・カッシリ)
- 南京虫
- 風 呂
- 私自身(自伝)
別巻 声のために
関 連 情 報
2013年
- 11月19日 小笠原豊樹書き下ろし『マヤコフスキー事件』(河出書房新社)発行
2014年
- 2月 小笠原豊樹さんが読売文学賞を受賞
- 3月23日 小笠原豊樹さん「図書新聞」インタビュー掲載
- 5月10日 『ズボンをはいた雲』発売
- 5月15日 「日本経済新聞」朝刊記事(「文化往来」)
- 5月21日 「日本経済新聞」夕刊書評(陣野俊史氏)
- 5月22日 出版業界紙「新文化」記事
- 6月14日 「東奥日報」朝刊書評(平田俊子氏)
- 6月17日 ロシア連邦大使館で出版記念会
- 6月22日 「熊本日日新聞」に関連記事(佐々木幹郎氏)
- 6月24日 ケイクスで書評(山形浩生氏)
- 6月26日 「東京新聞」「中日新聞」に記事(中村陽子記者)
- 8月17日 「朝日新聞」朝刊読書面に記事
2015年
-
3月10日 「ロシアNOW」書評(中村唯史・山形大学教授)
こんな本を読んでいる方におすすめします。
- ロートレアモン『マルドロールの歌』1869年初版
- ドストエフスキー『悪霊』1873年初版
- マヤコフスキー『ズボンをはいた雲』私家版、1915年
- 大杉栄『日本脱出記』アルス、1923年
- 小笠原豊樹訳『マヤコフスキー詩集』彰考書院、1952年
- 小笠原豊樹・関根弘訳『マヤコフスキー選集』飯塚書店、1958年
- 小笠原豊樹編訳『マヤコフスキー研究』飯塚書店、1960年
- 大江健三郎『日常生活の冒険』文藝春秋社、1964年
- ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』1966年初版
- 小笠原豊樹『マヤコフスキーの愛』河出書房、1971年
- スコリャーチン『きみの出番だ、同志モーゼル』草思社、2000年
- 小笠原豊樹『マヤコフスキー事件』河出書房新社、2013年
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