マヤコフスキー叢書2
13|『悲劇ヴラジーミル・マヤコフスキー』
不穏な二幕物の悲劇
きみたちにわかるかな、なぜぼくが嘲りの嵐のなか、平然と、自分の魂を大皿に載せてモダンな食事の席へ運ぶのか
ラフマニノフの退屈から逃げ出したマヤコフスキーと友人ブルリュックが意気投合した記念すべき夜。声を上げたロシア未来派の旗手として、奇矯な言動で「社会の趣味をなぐる」青年マヤコフスキーが20歳で書き下ろした第一戯曲。演出・主演を詩人自身がつとめ、ルナパルク劇場をすずなりにした観衆に「穴だらけになるほど口笛で野次られた」問題作。商業出版の道なく、わずか500部が友人ブルリュックの手で世に出た不穏な二幕物の悲劇がここに。平田俊子序文。日本翻訳家協会特別賞。
- 書 名:悲劇ヴラジーミル・マヤコフスキー
- 著 者:マヤコフスキー
- 翻 訳:小笠原豊樹
- 序 文:平田俊子
- 仕 様:ペーパーバック判(172 × 112 × 8ミリ)96頁
- 番 号:978-4-907511-02-9
- 初 版:2014年7月20日
- 定 価:952円+税
も く じ
一 水を越えて、時を越えて(平田俊子)
二 悲劇ヴラジーミル・マヤコフスキー
三 訳者のメモ(小笠原豊樹)
今までに、だれかが、どこかで、人間の考えを、こんなふうに、人間にあるまじき自由な空間で遊ばせた例があったか!
悲劇全体が置換と変身のめまぐるしい連続である
アンジェロ・リペッリーノ(詩人)
この悲劇の題名はヴラジーミル・マヤコフスキーだ。この題名は、詩人が作者ではなく詩の対象として、一人称で世界に呼びかけるという、天才的な単純さを発見したことを、背後に秘めていた。この題名は、作者の姓名ではなく、作品の内容を示していたのである
ボリス・パステルナーク(詩人)
最近、発見した一冊。このような本が新刊書店に並んでいることの奇跡。それだけで嬉しくなる。
クラフト・エヴィング商會
(代官山蔦屋書店「クラフト・エヴィング商會の世界」)
革命の詩人の挑発的な躍動感を伝えてすばらしい
野村喜和夫(読売新聞、2014年11月18日)
詩的で情熱的な言葉の熱泉の横溢があり、奇怪な登場人物のさなかに主人公のマヤコフスキーが屹立している
著 者 略 歴
ヴラジーミル・マヤコフスキー Влади́мир Влади́мирович Маяко́вский
ロシア未来派の詩人。1893年、グルジアのバグダジ村に生まれる。1906年、父親が急死し、母親・姉たちとモスクワへ引っ越す。非合法のロシア社会民主労働党に入党し逮捕3回、のべ11か月間の獄中で詩作を始める。10年釈放、モスクワの美術学校に入学。12年、上級生ダヴィド・ブルリュックらと未来派アンソロジー『社会の趣味を殴る』のマニフェストに参加。13年、戯曲『悲劇ヴラジーミル・マヤコフスキー』を自身の演出・主演で上演。14年、第一次世界大戦が勃発し、義勇兵に志願するも結局、ペトログラード陸軍自動車学校に徴用。戦中に長詩『ズボンをはいた雲』『背骨のフルート』『戦争と世界』『人間』を完成させる。17年の十月革命を熱狂的に支持し、内戦の戦況を伝えるプラカードを多数制作する。24年、レーニン死去をうけ、叙事詩『ヴラジーミル・イリイチ・レーニン』を捧ぐ。25年、世界一周の旅に出るも、パリのホテルで旅費を失い、北米を旅し帰国。スターリン政権に失望を深め、『南京虫』『風呂』で全体主義体制を諷刺する。30年4月14日、モスクワ市内の仕事部屋で謎の死を遂げる。翌日プラウダ紙が「これでいわゆる《一巻の終り》/愛のボートは粉々だ、くらしと正面衝突して」との「遺書」を掲載した。
訳 者 略 歴
小笠原 豊樹 〈おがさわら・とよき〉 詩人・翻訳家。1932年、北海道虻田郡東倶知安村ワッカタサップ番外地(現・京極町)に生まれる。東京外国語大学ロシア語学科在学中にマヤコフスキー作品と出会い、52年に『マヤコフスキー詩集』を上梓。56年、岩田宏の筆名で第一詩集『独裁』を発表。66年『岩田宏詩集』で歴程賞。71年に『マヤコフスキーの愛』、75年に短篇集『最前線』を発表。露・英・仏の3か国語を操り、『ジャック・プレヴェール詩集』、ナボコフ『四重奏・目』、エレンブルグ『トラストDE』、チェーホフ『かわいい女・犬を連れた奥さん』、ザミャーチン『われら』、カウリー『八十路から眺めれば』、スコリャーチン『きみの出番だ、同志モーゼル』など翻訳多数。2013年出版の『マヤコフスキー事件』で読売文学賞。14年12月、マヤコフスキーの長詩・戯曲の新訳を進めるなか永眠。享年82。
マヤコフスキー叢書
- ズボンをはいた雲(入沢康夫)
- 悲劇ヴラジーミル・マヤコフスキー(平田俊子)
- 背骨のフルート(高橋睦郎)
- 戦争と世界(町田康)
- 人 間(佐々木幹郎)
- ミステリヤ・ブッフ(谷川俊太郎)
- 一五〇〇〇〇〇〇〇
- ぼくは愛する
- 第五インターナショナル
- これについて
- ヴラジーミル・イリイチ・レーニン
- とてもいい!(L・カッシリ)
- 南京虫
- 風 呂
- 私自身(自伝)
別巻 声のために
関 連 情 報
2014年
- 7月20日 『悲劇ヴラジーミル・マヤコフスキー』発売
- 8月17日 「朝日新聞」朝刊読書面に記事
- 11月2日 「世界日報」書評
こんな本を読んでいる方におすすめします
- ロートレアモン『マルドロールの歌』1869年初版
- ドストエフスキー『悪霊』1873年初版
- マヤコフスキー『悲劇ヴラジーミル・マヤコフスキー』1914年初版
- マヤコフスキー『ズボンをはいた雲』私家版、1915年
- 大杉栄『日本脱出記』アルス、1923年
- 小笠原豊樹訳『マヤコフスキー詩集』彰考書院、1952年
- 小笠原豊樹・関根弘訳『マヤコフスキー選集』飯塚書店、1958年
- 小笠原豊樹編訳『マヤコフスキー研究』飯塚書店、1960年
- 大江健三郎『日常生活の冒険』文藝春秋社、1964年
- ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』1966年初版
- 小笠原豊樹『マヤコフスキーの愛』河出書房、1971年
- リペッリーノ『マヤコフスキーとロシヤ・アヴァンギャルド演劇』河出書房、1971年
- スコリャーチン『きみの出番だ、同志モーゼル』草思社、2000年
- 小笠原豊樹『マヤコフスキー事件』河出書房新社、2013年
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