マヤコフスキー叢書3
15|『背骨のフルート』
弾丸は不発に終わる……
よろしい! ぼくは出て行く!
《声の力で世界を完膚なきまでに破壊して、ぼくは進む、美男子で二十二歳》と言い放ったその年に詩人は奇妙な夫妻と知る。のちに秘密警察 OGPU の工作員として働くことになるオシップとリーリャのブリーク夫妻である。詩人と妻の関係を知りながら、あろうことか、夫オシップは詩人の作品を一行50カペイカで買いとり、『ズボンをはいた雲』『背骨のフルート』を出版する。『フルート』初版600部が世に出たのは16年2月。来る5月に詩人は《ロシア式ルーレット》を実行し、さいわい、弾丸は不発に終る……。高橋睦郎序文。日本翻訳家協会特別賞。
- 書 名:背骨のフルート
- 著 者:マヤコフスキー
- 翻 訳:小笠原豊樹
- 序 文:高橋睦郎
- 仕 様:ペーパーバック判(172 × 112 × 5.1ミリ)64頁
- 番 号:978-4-907511-03-6
- 初 版:2014年10月10日
- 定 価:952円+税
表紙は上段左から、N・ブルリュック、D・ブルリュック、V・マヤコフスキー。下段は、V・フレーブニコフ、G・クズミン、S・ドリンスキー(モスクワ、1913年)
も く じ
一 弾丸の終止符(高橋睦郎)
二 背骨のフルート
三 訳者のメモ(小笠原豊樹)
よろしい! きみの女は残る。
全体が不実の恋人リーリャへの「弾丸の終止符」であるとともに、ソビエト政府と人民と自分との三角関係の終止符への予告ともなっている
高橋睦郎(詩人)
一九一六年。これはマヤコフスキーにとって惨憺たる一年だった。……殺戮の報道にうんざりした詩人はこんな作品を書いている……。《モスクワ市に言ってやってください、/勝手に死守しやがれって!/そんな必要ないんだ!/武者ぶるいはやめときな!》
小笠原豊樹(詩人・翻訳家)
革命の詩人の挑発的な躍動感を伝えてすばらしい
野村喜和夫(読売新聞、2014年11月18日)
彼ほどのプライドの高いイケメンでも恋する相手を思うとこんな風に頼りなくなるのか、と却って好感度が上がります
著 者 略 歴
ヴラジーミル・マヤコフスキー Влади́мир Влади́мирович Маяко́вский
ロシア未来派の詩人。1893年、グルジアのバグダジ村に生まれる。1906年、父親が急死し、母親・姉たちとモスクワへ引っ越す。非合法のロシア社会民主労働党に入党し逮捕3回、のべ11か月間の獄中で詩作を始める。10年釈放、モスクワの美術学校に入学。12年、上級生ダヴィド・ブルリュックらと未来派アンソロジー『社会の趣味を殴る』のマニフェストに参加。13年、戯曲『悲劇ヴラジーミル・マヤコフスキー』を自身の演出・主演で上演。14年、第一次世界大戦が勃発し、義勇兵に志願するも結局、ペトログラード陸軍自動車学校に徴用。戦中に長詩『ズボンをはいた雲』『背骨のフルート』『戦争と世界』『人間』を完成させる。17年の十月革命を熱狂的に支持し、内戦の戦況を伝えるプラカードを多数制作する。24年、レーニン死去をうけ、叙事詩『ヴラジーミル・イリイチ・レーニン』を捧ぐ。25年、世界一周の旅に出るも、パリのホテルで旅費を失い、北米を旅し帰国。スターリン政権に失望を深め、『南京虫』『風呂』で全体主義体制を諷刺する。30年4月14日、モスクワ市内の仕事部屋で謎の死を遂げる。翌日プラウダ紙が「これでいわゆる《一巻の終り》/愛のボートは粉々だ、くらしと正面衝突して」との「遺書」を掲載した。
訳 者 略 歴
小笠原 豊樹 〈おがさわら・とよき〉 詩人・翻訳家。1932年、北海道虻田郡東倶知安村ワッカタサップ番外地(現・京極町)に生まれる。東京外国語大学ロシア語学科在学中にマヤコフスキー作品と出会い、52年に『マヤコフスキー詩集』を上梓。56年、岩田宏の筆名で第一詩集『独裁』を発表。66年『岩田宏詩集』で歴程賞。71年に『マヤコフスキーの愛』、75年に短篇集『最前線』を発表。露・英・仏の3か国語を操り、『ジャック・プレヴェール詩集』、ナボコフ『四重奏・目』、エレンブルグ『トラストDE』、チェーホフ『かわいい女・犬を連れた奥さん』、ザミャーチン『われら』、カウリー『八十路から眺めれば』、スコリャーチン『きみの出番だ、同志モーゼル』など翻訳多数。2013年出版の『マヤコフスキー事件』で読売文学賞。14年12月、マヤコフスキーの長詩・戯曲の新訳を進めるなか永眠。享年82。
マヤコフスキー叢書
- ズボンをはいた雲(入沢康夫)
- 悲劇ヴラジーミル・マヤコフスキー(平田俊子)
- 背骨のフルート(高橋睦郎)
- 戦争と世界(町田康)
- 人 間(佐々木幹郎)
- ミステリヤ・ブッフ(谷川俊太郎)
- 一五〇〇〇〇〇〇〇
- ぼくは愛する
- 第五インターナショナル
- これについて
- ヴラジーミル・イリイチ・レーニン
- とてもいい!(L・カッシリ)
- 南京虫
- 風 呂
- 私自身(自伝)
別巻 声のために
関 連 情 報
2013年
- 11月19日 小笠原豊樹書き下ろし『マヤコフスキー事件』(河出書房新社)発行
2014年
- 2月 小笠原豊樹さんが読売文学賞を受賞
- 3月23日 小笠原豊樹さん「図書新聞」インタビュー掲載
- 5月10日 『ズボンをはいた雲』発売
こんな本を読んでいる方におすすめします。
- ロートレアモン『マルドロールの歌』1869年初版
- ドストエフスキー『悪霊』1873年初版
- マヤコフスキー『悲劇ヴラジーミル・マヤコフスキー』1914年初版
- マヤコフスキー『ズボンをはいた雲』私家版、1915年
- 大杉栄『日本脱出記』アルス、1923年
- 小笠原豊樹訳『マヤコフスキー詩集』彰考書院、1952年
- 小笠原豊樹・関根弘訳『マヤコフスキー選集』飯塚書店、1958年
- 小笠原豊樹編訳『マヤコフスキー研究』飯塚書店、1960年
- 大江健三郎『日常生活の冒険』文藝春秋社、1964年
- ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』1966年初版
- 小笠原豊樹『マヤコフスキーの愛』河出書房、1971年
- スコリャーチン『きみの出番だ、同志モーゼル』草思社、2000年
- 小笠原豊樹『マヤコフスキー事件』河出書房新社、2013年
『背骨のフルート』取扱店(153店)
- 『背骨のフルート』納品先を、電話番号順で一覧にしました
- 上記掲載店にかぎらず、全国の書店でお求めいただけます
- 納品数は、「★」ひとつが2〜3冊の目安です
- 「★★★」の店は、7冊以上を納品しましたので、品切れのおそれが少ないと思われます
- 納品20冊を超える協力店は、「特★★★」と示しました
土曜社 doyosha [at] gmail.com