マヤコフスキー叢書4
17|『戦争と世界』
マヤコフスキー、戦争を語る
ああ、とじて、とじて、新聞の目を
1914年7月、世界大戦の始まりを21歳の青年詩人は興奮して受け入れる。俄然立ちはだかる戦争の恐怖に、この目で確かめるべく義勇兵に志願するも、思想穏健を欠くとされ、不採用。やがて銃後のけがらわしさと殺戮の報道にうんざりした詩人は『戦争と世界』を書き上げる。戦中の1915年に書き始め、翌1916年に完成しながらも、当局の検閲で、革命による帝政ロシア崩壊まで世に出ることのなかったマヤコフスキーの第三長詩。町田康序文。日本翻訳家協会特別賞。
- 書 名:戦争と世界
- 著 者:マヤコフスキー
- 翻 訳:小笠原豊樹
- 序 文:町田康
- 仕 様:ペーパーバック判(172 × 112 × 9.4ミリ)112頁
- 番 号:978-4-907511-10-4
- 初 版:2014年12月17日
- 定 価:952円+税
も く じ
一 ど阿呆が読むとき/読め、というとき(町田康)
二 戦争と世界
三 訳者のメモ(小笠原豊樹)
すげえ音だ。太鼓か、音楽か?
気配、眼差し、衣服の感じ。完璧であった。写真の男は、自分が、パンクロッカーたるもの、外面と内面をかく衝突させるべし、と確信を抱きつつも描けないでいた像、そのものであった
町田康(詩人・小説家)
マヤコフスキーという一詩人の内部に凝縮した戦争は、ここですばらしい比喩の連発というか、むしろ古典的な詩句の大盤振舞いとなって世に現れた
小笠原豊樹(詩人・翻訳家)
著 者 略 歴
ヴラジーミル・マヤコフスキー Влади́мир Влади́мирович Маяко́вский
ロシア未来派の詩人。1893年、グルジアのバグダジ村に生まれる。1906年、父親が急死し、母親・姉たちとモスクワへ引っ越す。非合法のロシア社会民主労働党に入党し逮捕3回、のべ11か月間の獄中で詩作を始める。10年釈放、モスクワの美術学校に入学。12年、上級生ダヴィド・ブルリュックらと未来派アンソロジー『社会の趣味を殴る』のマニフェストに参加。13年、戯曲『悲劇ヴラジーミル・マヤコフスキー』を自身の演出・主演で上演。14年、第一次世界大戦が勃発し、義勇兵に志願するも結局、ペトログラード陸軍自動車学校に徴用。戦中に長詩『ズボンをはいた雲』『背骨のフルート』『戦争と世界』『人間』を完成させる。17年の十月革命を熱狂的に支持し、内戦の戦況を伝えるプラカードを多数制作する。24年、レーニン死去をうけ、叙事詩『ヴラジーミル・イリイチ・レーニン』を捧ぐ。25年、世界一周の旅に出るも、パリのホテルで旅費を失い、北米を旅し帰国。スターリン政権に失望を深め、『南京虫』『風呂』で全体主義体制を諷刺する。30年4月14日、モスクワ市内の仕事部屋で謎の死を遂げる。翌日プラウダ紙が「これでいわゆる《一巻の終り》/愛のボートは粉々だ、くらしと正面衝突して」との「遺書」を掲載した。
訳 者 略 歴
小笠原 豊樹 〈おがさわら・とよき〉 詩人・翻訳家。1932年、北海道虻田郡東倶知安村ワッカタサップ番外地(現・京極町)に生まれる。東京外国語大学ロシア語学科在学中にマヤコフスキー作品と出会い、52年に『マヤコフスキー詩集』を上梓。56年、岩田宏の筆名で第一詩集『独裁』を発表。66年『岩田宏詩集』で歴程賞。71年に『マヤコフスキーの愛』、75年に短篇集『最前線』を発表。露・英・仏の3か国語を操り、『ジャック・プレヴェール詩集』、ナボコフ『四重奏・目』、エレンブルグ『トラストDE』、チェーホフ『かわいい女・犬を連れた奥さん』、ザミャーチン『われら』、カウリー『八十路から眺めれば』、スコリャーチン『きみの出番だ、同志モーゼル』など翻訳多数。2013年出版の『マヤコフスキー事件』で読売文学賞。14年12月、マヤコフスキーの長詩・戯曲の新訳を進めるなか永眠。享年82。
マヤコフスキー叢書
- ズボンをはいた雲(入沢康夫)
- 悲劇ヴラジーミル・マヤコフスキー(平田俊子)
- 背骨のフルート(高橋睦郎)
- 戦争と世界(町田康)
- 人 間(佐々木幹郎)
- ミステリヤ・ブッフ(谷川俊太郎)
- 一五〇〇〇〇〇〇〇
- ぼくは愛する
- 第五インターナショナル
- これについて
- ヴラジーミル・イリイチ・レーニン
- とてもいい!(L・カッシリ)
- 南京虫
- 風 呂
- 私自身(自伝)
別巻 声のために
関 連 情 報
2014年
- 5月10日 『ズボンをはいた雲』発売
- 7月20日 『悲劇ヴラジーミル・マヤコフスキー』発売
- 10月10日 『背骨のフルート』発売
こんな本を読んでいる方におすすめします。
- ロートレアモン『マルドロールの歌』1869年初版
- ドストエフスキー『悪霊』1873年初版
- マヤコフスキー『悲劇ヴラジーミル・マヤコフスキー』1914年初版
- マヤコフスキー『ズボンをはいた雲』私家版、1915年
- 大杉栄『日本脱出記』アルス、1923年
- 小笠原豊樹訳『マヤコフスキー詩集』彰考書院、1952年
- 小笠原豊樹・関根弘訳『マヤコフスキー選集』飯塚書店、1958年
- 小笠原豊樹編訳『マヤコフスキー研究』飯塚書店、1960年
- 大江健三郎『日常生活の冒険』文藝春秋社、1964年
- ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』1966年初版
- 小笠原豊樹『マヤコフスキーの愛』河出書房、1971年
- リペッリーノ『マヤコフスキーとロシヤ・アヴァンギャルド演劇』河出書房、1971年
- スコリャーチン『きみの出番だ、同志モーゼル』草思社、2000年
- 小笠原豊樹『マヤコフスキー事件』河出書房新社、2013年
- 岩田宏『岩田宏詩集成』書肆山田、2014年
- トロワイヤ(小笠原豊樹訳)『仮面の商人』小学館文庫、2014年
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