「日本人で泥棒? そりゃ珍しいな」

胸が潰れるような事態が続いています。

 

 

そんな午後に、印刷所のM氏が来社し、こんなことを話してくれました。

 

「東京が経済を止めてはいけない――」。

 

東京は、いうまでもなく、日本経済のエンジンなのだから、電力を節約しながらも経済をドンドンまわさなきゃとの氏の話に、なんだか励まされてしまいました。

 

ちなみに、同氏はこんな時だからこそ、外食の頻度を増やして、財布のひもを緩めているそうです。

 

 

さて、土曜社版『日本脱出記』のことです。

 

 

本書は、大杉栄が1923年、ベルリンの国際アナーキスト大会に招待され、途中のパリで逮捕・強制送還されるというストーリーなんです。

 

 

そこで、ちょっと想像してみてください。

 

1923年のパリに、日本人は、何人いたでしょう?

 

ちなみに、外務省によると2010年は、12,512人とのこと。

 

 

答えは、435人です。

※『パリ・日本人の心象地図』(藤原書店、2004年)より

 

 

時は「狂騒の20年代」、在留邦人がぐっと増えつつあったパリで、大杉が活躍するわけです。

 

 

世界各国の同志と連絡をとる。

 

ウクライナの農民アナキズムの研究を進める。

 

キャフェでパリの女と逢い引きする。

 

『東京日日』の特派員に密かに原稿を渡す……。

 

 

「一犯一語」とうそぶく語学の天才だからこそなせる、縦横無尽の行動です。

外国の街だからという不便をちっとも感じさせません。痛快です。

 

パリの大杉栄、38歳の活躍を、どうか本書でお楽しみいただきたいという出版者からのお願いでした。

 

 

余談です。

 

当時、パリのフランス人が日本人をどのように見ていたのか、本書におもしろい記述があります。

 

「日本人で泥棒? そりゃ珍しいな。」

 

そう、日本人の高い道徳は、1923年のフランスですでに定評があったんですね。

なんとも誇らしくなる記述です。

 

 

今般の大震災でも、日本人の道徳の高さが外国メディアで報道されているようです。

なんだか、勇気が出るような気がします。