「××××××××××躍る。」

土曜日の朝です。

 

 

「ところで、なぜ土曜社という社名にしたんだい?」

 

と問われることが増えてきました。

すると、いくつか用意してある答えから、嬉しくなって答えるのです。

 

たとえば、かつて大杉栄と同志たちの「北風会」が毎週土曜日に開催されたことにちなんで——。

 

と、それらしくすまして答えてみたり。

でも、これは後知恵のひとつです。

 

 

ところで、大杉栄の『日本脱出記』には、こんな記述があります。

 

「××××××××××飛ぶ。×××××××光る。」

 

戦前の出版法による検閲で、削除された箇所は、組版で「×」の伏字を当てていたらしいのです。

 

戦後、検閲はなくなります。

 

伏字にされた箇所は、原稿にもどって復旧されるか、あるいは「何字削除」と印刷されるのが主流です。

 

原稿も見つからず復旧できない場合、こうなります。

 

「(8字削除)飛ぶ。(7字削除)光る。」

 

これに対して、土曜社版『日本脱出記』では、伏字は「×」のままとしました。

 

検閲のボリュームが、これで一目瞭然と考えてのこと。

時計はデジタルではなく、アナログの針式にかぎるというのと同じ理屈です。

 

 

さて、

 

「××××××××××躍る。」

 

これが土曜社の由来です。

 

あっさりしたもので、「土曜」の2文字に心が躍るから、というのがごく正直な気がします。