土曜日の朝です。
*
「ところで、なぜ土曜社という社名にしたんだい?」
と問われることが増えてきました。
すると、いくつか用意してある答えから、嬉しくなって答えるのです。
たとえば、かつて大杉栄と同志たちの「北風会」が毎週土曜日に開催されたことにちなんで——。
と、それらしくすまして答えてみたり。
でも、これは後知恵のひとつです。
*
ところで、大杉栄の『日本脱出記』には、こんな記述があります。
「××××××××××飛ぶ。×××××××光る。」
戦前の出版法による検閲で、削除された箇所は、組版で「×」の伏字を当てていたらしいのです。
戦後、検閲はなくなります。
伏字にされた箇所は、原稿にもどって復旧されるか、あるいは「何字削除」と印刷されるのが主流です。
原稿も見つからず復旧できない場合、こうなります。
「(8字削除)飛ぶ。(7字削除)光る。」
これに対して、土曜社版『日本脱出記』では、伏字は「×」のままとしました。
検閲のボリュームが、これで一目瞭然と考えてのこと。
時計はデジタルではなく、アナログの針式にかぎるというのと同じ理屈です。
*
さて、
「××××××××××躍る。」
これが土曜社の由来です。
あっさりしたもので、「土曜」の2文字に心が躍るから、というのがごく正直な気がします。