今般の大地震でも、在日外国人の「日本脱出」が報じられています。
1923年、大正の関東大震災の数ヶ月前。
大杉栄の「日本脱出」も、数々の憶測を呼んだ一大事件でした。
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たとえば、だれが金を出したかという、旅費問題。
あろうことか、警察を担当する元内務大臣の後藤新平も嫌疑をかけられた一人でした。
それも無理からぬことで、後藤新平はその以前、大杉栄に金を出したことがあった——。
そして、その事実は『改造』連載(『自叙伝』)によって、広く知られていたんですね。
ところが実のところ、旅費を出したのは有島武郎なんです。
さすが有島武郎は、あっさり事実を認めます。
そして、新聞記者の取材に応じ、
「僕は大杉君とは立場が違うが、ああいう器局の大きい人物を、いたずらに日本のようなせせっこましい所に置いて、内輪喧嘩をさせておくのは惜しいような気がしたので、世界の大勢を見てきたほうがよかろうと考えたからである」
と声明を出しています。(大杉豊著『日録・大杉栄伝』より)
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大杉栄帰国のニュースも大きく報じられました。
たとえば、1923年7月13日付『東京日日新聞』は、「凱旋将軍の都入り」と大見出しで伝えています。
帰国歓迎会もにぎやかで、銀座八丁目のカフェーパウリスタには、改造社の山本実彦はじめ錚々たる名士たちが会したそうです。
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さて、前置きが長くなりました。
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