「未来ちゃん」とパパっ子の「魔子ちゃん」

おはようございます。

東京は冷涼な朝です。

 

 

さて、表参道交差点すぐの山陽堂書店で、大杉栄の『日本脱出記』が陳列されています。

 

◉山陽堂書店 正面ウインドウ

 

隣りにみえる赤い服の少女は、その剽軽な笑顔と屈託のない泣きっ面で、いま東京中の書店店頭を飾っている人気の「未来ちゃん」です。

 

そういえば、大杉栄の子煩悩は有名でした。

 

少し長くなりますが、「日本脱出」の布石で、6つになる一番上の女の子を同志の家にやるシーンを引用してみます。

 

 

 「こんどは魔子の好きなだけいくつ泊まってきてもいいんだがね。いくつ泊まる? 二つ? 三つ?」

 

 僕は子供の頭をなでながらいった。その前に二つ泊まった翌朝僕が迎いに行って、彼女がだいぶ不平だったことがあったのだ。そしてこんどもやはり、「二つ? 三つ?」といわれたのに彼女は不平だったものと見えて、ただにこにこしながら黙っていた。

 

 「じゃ、四つ? 五つ?」

 

 僕は重ねて聞いた。やはりにこしながら、首をふって、

 

 「もっと。」

 

 といった。

 

 「もっと? それじゃいくつ?」

 

 僕が驚いたふりをして尋ねると、彼女は掌(てのひら)の上に右の手の中指を三本置いて、

 

 「八つ。」

 

 と言い切った。

 

 「そう、そんな長い間?」

 

 僕は彼女を抱きあげてその顔にキスした。そして、

 

 「でも、いやになったら、いつでもいいからお帰り。」

 

 と付け加えて彼女を離してやった。彼女は踊るようにして、M〔村木〕といっしょに出かけて行った。

 

(大杉栄著『日本脱出記』より)

 

 

『日本脱出記』には、密航記の挿話として、留守の魔子ちゃんが尾行を煙にまいて活躍するシーンもあります。

 

子供の邪気の無さに、大杉栄もどれだけ救われたことでしょう。

 

 

表参道の山陽堂書店では、6/24(金)に『本屋と出版の「未来ちゃん」。』というトークショーがあるそうです。

 

山陽堂書店ウェブサイト

 

同店では、『未来ちゃん』写真展も開催中です。

気になる方は、ぜひチェックしてみてください。