こんばんは、
この秋は、大杉栄の『自叙傳』について、ドシドシ宣伝していきます。
年に3冊とスロウな出版計画ですから、どうしても、1冊ごとに余計な体重がかかってしまいます。
若干くどくなるかもしれませんが、適度にお付き合いいただければ幸いです。
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さて、
今さら『自叙傳』の宣伝について、考えあぐねています。
おもしろいことは間違いないけれど、なぜ今、読んでもらいたいのか——それが問題なんです。
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大杉栄の『自叙傳』は、ほとんど古典といえる作品です。
福沢諭吉の『福翁自伝』、勝小吉『夢酔独言』と合わせて、日本が誇る3大自伝ともいわれます。
本書に触発をうけ、あるいは本書を下敷きにして、数々の傑作も生まれました。
瀬戸内寂聴の『美は乱調にあり』は1965年、吉田喜重監督の『エロス+虐殺』は1970年です。
つい昨年の2010年には、中森明夫の『アナーキー・イン・ザ・JP』という青春小説も生まれました。
そのおもしろさは折り紙つきと居直りたくもなるところです。
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ただ、大杉栄の人物や、その影響の広がりを知らない若い読者にも、この『自叙傳』のおもしろさを訴えてみたい。
そんなわけで、ちょっと突飛なブックリストをつくってみました。
これらの本を読んでいる友人たちに、ぜひ大杉栄の『自叙伝』をそっとすすめてみていただけないでしょうか。
そのいやがるのを無理押しつけに、『不如帰』を借りてきて読ました。先生、最初の間はむずかしそうな顔をしてページをめくっていたが、だんだん眉の間の皺をのばしてきた。とうとうしまいにはそのさざえのような握り拳でほろほろと落ちる涙をぬぐいはじめた。
(大杉栄著『自叙傳』より)
きっかけは「無理押しつけ」でも、それが功を奏することもありますから。
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凡例:著者『書名』(刊行年)
- 勝小吉『夢酔独言』(1843年)
- 福澤諭吉『福翁自伝』(1899年)
- 森鷗外『ヰタ・セクスアリス』 (1909年)
- マヤコフスキー『私自身』(1922年、1928年)
- 大杉栄『自叙傳』(1923年)
- セリーヌ『なしくずしの死』(1936年)
- 太宰治『正義と微笑』(1942年)
- 坂口安吾『風と光と二十の私と』(1948年)
- J.D. サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(1951年)
- 岡本太郎『青春ピカソ』(1953年)
- 坂井三郎『大空のサムライ』(1953年)
- 殿山泰司『三文役者あなあきい伝』(1965年)
- 瀬戸内寂聴『美は乱調にあり』(1965年)
- 司馬遼太郎『坂の上の雲』(1969年)
- 庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』 (1969年)
- 吉村昭『関東大震災』(1973年)
- ジャン・ルノワール『ジャン・ルノワール自伝』(1974年)
- ポール・オースター『ムーン・パレス』(1989年)
- 島田雅彦『君が壊れてしまう前に』(1998年)
- 四方田犬彦『ハイスクール1968』(2001年)
- 佐藤優『私のマルクス』(2007年)
- 坂本龍一『音楽は自由にする』(2009年)