さて、いきなり宣伝です。
「ウラゲツ☆ブログ」に『自叙傳』が登場しました。
それにしても大杉栄はよく「刺され」ます。16歳の折には同期生に刺され、31歳の折にはとある女性に寝しなを刺されています。どちらも浅からぬ傷ですが、それを告白する大杉の筆はじつにあっけらかんとしたもの。(ウラゲツ☆ブログより)
全文はぜひ、「ウラゲツ☆ブログ」でご覧ください。
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31歳の大杉栄が刺されたのは、葉山の旅館でのことでした。
世に言う日蔭茶屋事件です。
大杉栄を刺した神近市子は、東京日日新聞の女性記者として活躍するなど、「新しい女」として耳目をあつめる存在でした。
彼女は、刑期を終えると、のちに社会党から代議士に選出されています。
事件の舞台となった葉山の日蔭の茶屋は、いまも創業の地で日本料理店を営んでいます。
300年に余る老舗ですね。
屋号だけは、日影茶屋と一字変えたようです。
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夏の終わりにこの日影茶屋をおとずれた際、かくかくしかじかと女将さんに来意をつげると、奥のほうから当時の写真を持ってきてくれました。
事件から95年が経ち、日影茶屋にも当時を知る人がいないのが残念です。
『日影茶屋物語 しづ女覚書』(かまくら春秋社、1992年)という本では、72年の長きにわたり茶屋に勤めた三角しづさんの聞き語りを読むことができます。
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この秋、『自叙傳』を読み終えてしまった方には、葉山の日影茶屋をおとずれてみることをおすすめします。
海辺のラ・マーレ・ド・チャヤ(日影茶屋の支店です)から、葉山の海をぼんやりながめるにも、もってこいの季節です。