「文庫が決定版となる現状は、おかしい。」
と、ある流行作家が苦言を呈していました。
小説を例にとると、初版は四六判の単行本として発売され、3年後をめどに、文庫で出しなおされることが多いようです。
初版を出してみて、わかった誤字や脱字など3年分の蓄積が文庫に盛りこまれます。
さらに文庫には、しかるべき人物(けっこう豪華だったりします)による解説というおまけも付きます。
すなわち、文庫が決定版になるというわけです。
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いきなり突飛なようですが、ここ数日、似たようなことを考えています。
本の制作においては、まず企画書があり、すべてはそこからスタートします。
順にならべてみると、つぎのような流れでしょうか。
企画書
↓
編集と制作
↓
本の完成
↓
POP作成
↓
発売
企画書ではあいまいだったアイデアも、編集と制作のなかで磨かれて、最高の状態で、本というかたちに結実する。
ここまでは、いいんです。
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本の制作がひと段落すると、
さて、と気分を変えてPOP(読者の気をひくための掲示物)を作りはじめることになります。
すると、
「この文句いいな、帯に使えばよかった。」
「写真は、こっちもおもしろいな。」
など、新たな発想が浮かんでくる。
人は渦中にいるときより、仕事から手が離れたときにこそ、妙案を思いつくものなんですよね。
ただ、せっかくの妙案も、すでに時遅し。
もう印刷に入っていますから、本に盛りこむことはできません。
そして、POPが決定版となる。
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そんなわけで、上記の流れを反転させて、企画書のつぎは、すぐPOPを作りはじめることにしました。
6月新刊は、『リガ案内』です。
POPとポスターは、もう印刷しています。
本は、いま印刷所と原稿をやりとりしているところです。
本を決定版とすべく、最後までねばっています。