今月初めから、大手町の新聞社で記事審査の仕事をはじめました。
夕方17時に出社し、明くる日の朝刊を印刷にまわし終えて、26時すぎに帰宅します。
たった一人の社員が副業をはじめたということになりますから、土曜社としては由々しき事態です。
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2年前の創業にあたり、「よく引き際を考えておくように」と父が助言をくれました。
が、自分には引き下がるつもりは毛頭なく、今もその気持ちは変わりません。
どうせうまくいく――。
あとで知った坂口恭平さんのことばも、都合よく自分を励ます材料になりました。
先行する他社の例をみれば、靴を売りながら本を出し続けているという出版社もあります。不動産経営に支えられているような社も、少なからずあるでしょう。
紀伊國屋書店の故松原治さんは、本屋が副業をはじめることを嫌いました。
「本よりもうかるものを売っている部門が必ず威張るようになる」
というのです(『松原治『私の履歴書 三つの出会い』)。
自分も創業するからには、転職情報を避け、他社をうらやむことなく、過去の読書記録をたぐったりしながら自分を励まして、元気を持続することにつとめてきました。
自分としては楽しいことだけに集中しているつもりですが、節度を守るという点では、禁欲的な態度に似ているかもしれません。
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ところが、ある若い企業の創業者の話をきいて視界が開けるような気がしました。
彼は創業会長の職にとどまりながら、ジブリに入社し、無給で鈴木敏夫さんのカバンを持って動いているというのです。
なんだか自由で、愉快じゃないですか。
世の中は、行ったり来たりできるんです。
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副業をはじめたと聞いて、「本業はだいじょうぶか」と心配してくださる向きもあるかもしれません。
だいじょうぶです。
自分は気分も高く、1月の新刊に取り組みはじめています。
新聞社での仕事は、校正や編集の修行にもなり、組織を通じて見識も広げられます。 もらった給与は、来春予定している英文出版のもとでになる――。
というわけで、一挙三得の自分の選択に満足している次第です。